昨年、東日本大震災で開催されなかった農芸化学会大会が4月22~25日、京都で開催されました。興味ある演題を2、3拾ってみました。デフェリフェリクリシン(DFCY)の大量培養技術を確立し、DFCYが運動時の耐久力向上、抗炎症効果、抗酸化性、美白効果を有することが報告されました。清酒の異常着色原因物質として半世紀前に発見されたDFCYに新たな用途が開け、今後の発展が期待されます。
酒類中の呈味成分に関して、清酒の疎水性苦味ペプチド、甲州種ワインの苦味化合物、メイラード反応生成物メラノイジンがコク味を有する、など興味深い発表がありました。
ワインの”生臭み”は魚介類とワイン中の鉄イオンが原因であることが知られていますが、ワイン中の鉄分をフィチン酸と死滅処理酵母を同時に処理することで”生臭み”をほとんど感じさせなくできる技術の紹介。
「適性飲酒啓発のためのアルコール体質チェック」有害な飲酒を低減するための取り組み、と題したビールメーカーの報告。
シンポジウムから酵母2題。「働き者」の清酒酵母-高発酵性原因遺伝子の解析-と題し、清酒酵母が熱ショックやエタノール耐性が実は他の実験室酵母と比べて低いという、従来の説とは逆の結果が得られ、実際に清酒酵母はそれらの耐性が低いため、環境が厳しくなっても発酵を続けてしまうため、アルコールを高濃度に蓄積することが、遺伝子レベルで確認された。また、「とても多様な日本の酵母」では、西表島と利尻島のサンプルから約千株の酵母が分離され、遺伝子配列から200種以上の種が含まれ、その内100種以上が新種であったこと、また、この100種が、The Yeasts 第5版に収録された種の数の14%に及ぶことから、日本が微生物資源国として微生物の多様性を有することが紹介されました。
4月から新しく醸造業界に入られた方も多いと思います。是非、醸造協会会員、醸造学会会員にご入会下さい。特に、学生の方は、醸造学会学生会員に登録されますと、毎月ワンコイン以下(417円)で日本醸造協会誌がお手元に届きます。入会をお待ちしております。