○村山雅俊 ¹、平吉明日香 ³、小松夕子 ³、室井佑介 ²、川上晃司 ²、小林拓嗣 ³、岩下和裕 ³[1 八海醸造(株)、 2(株)サタケ、3 酒類研]
【目的】これまでに我々は,小仕込みにより球形・原形・扁平精米を比較し,白米の形状が,酵素力価や発酵特性,一般成分,香気成分,清酒メタボロームに大きな影響を与えることを明らかにしてきた.これら一連の分析により50%原形・扁平精米が,従来の35%球形精米に匹敵することが示唆された.しかし,小仕込みは実際の醸造条件と大きく異なる.そこで35%球形・50%原形精米を用い100kgの試験醸造と分析,官能評価を行なった.
【方法】R1BY山田錦を原料に,GCロール,cBNロールでそれぞれ35%球形,50%原形精米を行なった.続いて,酒母・添麴を各1ロット,仲・留麴を各2ロットずつ作成した.さらに,総米100Kgの三段仕込みを二本ずつ行なった.すべての工程で蒸米水分含量と推移,温度経過がほぼ同様になるように制御した.得られた米麹と清酒について,酵素活性測定,一般分析,香気成分分析,醸造酒メタボローム分析,官能評価を行なった.
【結果】おおよそ目的の白米の形状がえられ,各仕込み経過の差は最小限に抑えられたが,モロミで原形白米のキレがやや早い傾向が見られた.各米麹の酵素活性,酒母の一般成分に有意な差は見られなかった.アルコール収得量,カス歩合には違いが見られず,清酒の一般分析でも,ほぼ同一の結果が得られ,日本酒度とグルコース濃度に極僅かな有意差が見られた.香気成分生成でもよく一致し,ブタノールとイソアミルアルコールに極僅かな有意差が見られた.メタボロームの比較解析については,小仕込みの50%原形・球形白米清酒の比較においては,25%の成分に差がみられたのに対し,差のある成分が0.4%と非常に少なくなっていた.官能評価結果でも同等の結果となった.以上の結果から,50%原形精米による清酒は35%球形精米に極めて近い特性を有することを明らかにした.
・斎藤研究員,長岡技術科学大学の大武氏をはじめ,試験醸造に協力いただきました多くの方に感謝申し上げます.