ご氏名をお願いします
伊藝 壱明(いげい かずあき)
ご所属
瑞泉酒造株式会社 製造部・商品開発
おすすめ商品
おもろ18年
すでに有った銘柄でしたが2019年にブレンドを任されました。『おもろ』シリーズは弊社の旗艦ブランドでしたので責任も重かったですが、瑞泉の古酒の良さを表現すべく取り組みました。長期熟成酒ならではの複雑さと甘い香り、そして特になめらかさを重視したブレンドを意識しました。お陰様で、東京のTWSC 2020にてゴールド、サンフランシスコのSFWSC 2020にてゴールド、そしてロンドンのIWSC 2020にてゴールドアウトスタンディングを受賞しました。単年度で金賞三冠を獲得できたことは研修※で学んだ官能評価能力への自信になりました。
※中核人材育成事業として第1期(2017⁻18)、第2期(2018-19)に渡り行われた技術研修。沖縄国税事務所酒類鑑定官などが講師となり官能評価研修を中心に、製造技術理論、マーケティング理論を学んだ。
思い出の醸造物を教えてください
塩屋のミキ(神酒)
その理由を教えてください
私の母の郷里、沖縄県大宜味村塩屋地区にウンガミ(海神祭)と呼ばれる行事があります。ミキは神前に捧げられた後、地元の人や祭りの見学者らにも振舞われ、無病息災を願う縁起の良い飲み物です。主な材料は粥を煮て、サツマイモと生米を混ぜ、一晩発酵させて作られるとてもシンプルなものです。私がまだ5才くらいの頃、父に連れられ初めてミキを口にしたときの光景を鮮明に覚えています。大きなポリバケツの蓋を開けると白い粥のなかにサツマイモの黄みがあり、掬うと粘りがありました。最初はチーズのような強烈な匂いに抵抗を感じたのですが、ふしぎと次第に慣れていきました。口にしてみると甘みと酸味があり、やがておかわりするほど美味しいと感じていました。さらに数日発酵させると酸味が増し、より美味しく感じます。私の幼い時代の発酵の記憶です。
思い出の写真
『尚』開発の中心メンバー。左から石川酒造場の上間長亮さん、平良寛進さん。私。元まさひろ酒造の安里昌利さん。瑞穂酒造の仲里彬さん。技術者の立場で大事にしてきた伝統的泡盛を、別の角度から解釈する思考実験を繰り返した先にAWAMORI NEXT『尚』は誕生しました。鑑定官より学んだフレーバーホイールをどのように活用できるか、泡盛をどのように解釈し得るか。酒造所の垣根を越えて技術者が集まり、手弁当で未来の泡盛について議論し合った濃密な時間はとても刺激的でした。また、当初から勉強会へのご理解と、ご厚意により勉強場所に瑞穂酒造を提供くださった瑞穂酒造 玉那覇美佐子社長には感謝してもしきれません。私にとって瑞穂酒造はまさに『トキワ荘』でした。
ご略歴
1979年生まれ
2007年 北陸先端科学技術大学院大学 マテリアル科学研究科博士前期課程 修了
同 瑞泉酒造株式会社 製造部 入社
趣味
パンを焼いたり、焼き鳥を仕込んで焼いたり、子供たちが喜ぶのでよく料理を楽しんでいます。最近は葉巻と泡盛を合わせるのが楽しいです。
ご紹介者・上間様からのメッセージ
伊藝さん,バトンタッチお願いいたします。「古酒化のメカニズム解明」についても今度飲みながらいろいろ意見交換しましょう。まずは,泡盛技術者の集いの復活ですかね。また集まりましょう。引き続き,よろしくお願いします。
上間様へメッセージを!
泡盛は長い歴史がありますがまだまだ謎の部分も多くあります。古酒化のメカニズムもその一つです。蒸溜したての荒々しい酒が年月を重ねることで、どのように甘いかぐわしい香りになるのか。テーマは尽きませんが我々技術者が頑張ってもっといい泡盛をつくっていきましょう!
HPリンク
ホームページ:https://www.zuisen.co.jp/
今後の抱負や今後へ期待すること
「泡盛の出荷量が年々減少している」と云われて久しいですが、それはつまり「○○で泡盛を楽しんでいる」という声がだんだんと少なくなっていることと思うと寂しいし、もったいないと感じる。泡盛は美味しいだけでなく、未知の楽しい可能性があるお酒なので、これからもまずは自分が楽しさを開拓していきたい。